ものわすれブログ

日々のこと(2)来てよかったですか?

12/15/2016

 毎月30人ほどの新患者さんが受診してこられます。母が内科、眼科をしていて、ほかにも整形外科や胃腸科、歯科、老人デイケアをしていた時代とは違って、ボクは認知症だけを診ることにしました。しかもその認知症の人の内科や整形など身体面はそれぞれの「かかりつけ医」の先生に診ていただき、認知症のことだけを当院が診るという、完全な連携をするようになりました。そんな影響でしょうか、かつてのように他の身体科があった時よりもずっと地域の先生方との連携ができ、紹介もほとんどの人が地域の先生から紹介状をもらってきてくださいます。

 

 「専門医なのだからちゃんと診断ができるか」と聞かれれば、恥ずかしながら「はい」とお答えできないことが多いのも白状しなければなりません。「またブログでそんなこと書いて何という医療機関か」とお𠮟りを受けるかも。でもね、自分の守備範囲をある程度守ってきた25年なんです。

 大阪市は全市を3つのエリアに分けてボクの診療所は北エリアに所属します。そこを担当する大阪市立弘済院附属病院には認知症疾患医療センターがあって、しっかりと診断してくれます。大阪市立大学も同様です。大阪府下にもそのようなセンターがあり、そこで診断してもらった人々を、その後、地域で開業する専門医としてボクはずっとその人や家族の人生と伴走すること、それが自分の役割だと感じているからです。

 

 これまでの25年でたった3100人しか患者さんを診ていません。一般的には専門医療機関として25年やっていれば1万人や2万人の患者さんを診ているはずです。その事実は逆の方向から見ると、ひとりひとり、そのご家族も含めてお付き合いする時間が長いということをあらわしています。患者さんとして来院された認知症の人と平均して10年のお付き合いがあるのがボクの診療所の特徴です。最も長いアルツハイマー型認知症の女性とは25年目のお付き合い、若年性認知症で大学病院から託された人は前頭側頭型認知症で19年目になります。

 言い換えればボクは治療する者や鋭い観察眼を持った診断者にはなり得なくて、その代わりその人と家族が人生を送るときに、「いっしょに過ごしていきましょう」という立場の医者だということです。

 「なんじゃそれ、医者なら患者さんを治さなければ医者とは言えないじゃないか」とよく言われてきましたが、今でも治せていません。ともに過ごして、その人と家族が少しでも安心して不安を取り除いてくれれば、病気の悪化があと倒しできることをこの四半世紀に実感してきました。できればこの立場をあと四半世紀続けていければ、と思います。

 

 これも医者らしくないかもしれませんが、その長い付き合いの初めに出会うその時こそ、最も大切な日だと思っています。初診の時にご自身で、そして家族とともに来院される人が、「まあ、こんな医療機関でも、こんな医者がいてもまた来てやってもいいな~」と思えることが、次の診察に、その後の20年お付き合いにつながります。

 だからね、いつも思っているんですョ。初診の患者さんが来院されて診察を終え、部屋から出ていくとき、ボクはその人と家族の後姿に声をかけています。「来てよかったですか?」ってね。

 

 

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