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これからも(1)妻を介護する彼との別れ

  • 執筆者の写真: 松本一生
    松本一生
  • 2019年10月12日
  • 読了時間: 3分

 今日は台風の接近のために診療所は臨時休診にしました。昨年(2018年)の台風21号を甘く見て関西空港にかかる橋にタンカーが激突しているころ(妻を実家である大阪の診療所の上階で介護していて)、建物が建造40年にして揺れる恐怖を体験し、京都に逃げ帰ってきました。その京都でブログを書いています。

 先日、長くお付き合いさせていただいた友人、いやボクの恩人である、「認知症の妻を介護する夫」が静かに旅立っていきました。ボクはその人の娘さんの知り合い(ある心理系の学会での友人)でしたので、彼女から「母の物忘れの相談に乗ってほしい」と言われた時に迷わず協力させていただきました。

 その翌年にボクの妻が体調を崩し、こちらから往診に行くことができなくなっても、ご両親は

大阪の診療所まで来てくれました。しっかりとした側面がありながらも、認知症の影響でうまく状況判断がしにくくなっている妻を、見事にフォローする夫の姿に感心しながら診療が続きました。

 しかし「男性介護者」は、つい無理を重ねて自らの体調を崩しやすいことは、この5月の京都での日本認知症ケア学会でも発表したように、彼も体調を崩しました。心臓のバイパスが必要になったのです。でも介護しながら自分の体調とも向き合う彼の姿を見て、いつもボクは勇気をもらうことができました。ただ単なる「がんばり」ではなく、ケアを受ける妻の気持ちを考え、自尊感情を損なうことなく生活し、遠くに離れて生活している娘さん、息子さんの好意を受けながらも、夫婦二人で生活している彼の姿から、ボクは彼から受けるメッセージによって自分が支えられていることを実感しました。

 バイパスが成功した数年後、彼に肺の腫瘍が見つかりました。驚いたのは、病状が進んできたときに妻のことを考えて長年住んだ地方から、思い切って東京の子どもたちの近くの施設に移り住んだことでした。これがボク自身のことならこれほど思い切った決断はできなかったでしょう。

 そんな彼にもエンドオブライフケアの時期が訪れ、それでもみんなは腫瘍と向き合い、彼も自らの将来に希望を失うことなく、10月の初旬に旅立っていきました。

 奥さんのケアを男性介護者としてやり切った姿を見せてくれてありがとうございました。娘さんや息子さんと仲の良い両親であった二人から、あたたかな気持ちをもらえたことにも感謝しています。そして何よりも認知症と向き合った妻を理解し、自分の体調や気持ちと向き合いながら、それでも笑顔を見せ続けてくれたあなたの「生きる姿」に、ボクはいつも励まされました。「先生、無理せずにやりましょうよ」といつも言ってくれたあなたの言葉を胸に、ボクはこれからも奥さんの治療者として、子どもさんたちに協力していきますからね。

 台風の被害が大きくならないことを願って。


 
 
 

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