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コロナ:大阪の轍を踏まないで

  • 執筆者の写真: 松本一生
    松本一生
  • 2021年8月3日
  • 読了時間: 4分

 ここ数日で急激なコロナ感染者の増加が報じられています。誰の目にも明らかなのは首都圏はじめ関西も感染者が…‥、急激に上昇してきたことです。実行再生産数が1.5倍などと聞くと、この先にとめどなく感染者が増加する可能性も出てきます。


 高齢者への接種を終えて夫の母親を介護する夫婦が「ワクチン接種を終えたから夫婦で旅行に行くことにしました」と嬉しそうに伝えてくれました。「介護の合間の微笑ましい知らせ」とこころから喜んであげたいと思う反面、この感染爆発の時期に何を言い出すのかと驚きもしました。(あ、ごめんね。あなた達を責めているのではないのです。安心しすぎる危険性を憂いているので…)

 ボクの診療所は認知症専門で発熱外来もなく、第一線でコロナと闘っているのではないけれど、診療所がある大阪は4月末から5月に地獄の状況になりました。関西圏以外の人々にはあまり伝わらなかったかもしれませんが、大阪はすでに4月に今の首都圏が迎えている事態を経験しました。


 ボクが担当する患者さん1200人の中で、この1年半にコロナ感染した人20人強の中で、この4月には入院できない人が何人もいました。施設にいる人はもちろんその施設で加療することを求められ、普段、訪問してくれる内科医がコロナ感染への対応を求められました。施設では酸素投与さえできず、複数の人が命を落とす結果になりました。今、首都圏に起きかけている現象です。

 

 国は重症の人しか入院できないと言い始めていますが、4月~5月の大阪では入院できず自宅で不安な中、療養した人も多く、「入院できないことの恐怖」を支える仕組みがしっかりとしていなければなりません。オンラインや往診の拡充と言われますが、コロナに感染して実際には誰とも会うことができず、いつ悪化するのかを恐怖の中で過ごした人もいました。在宅療養を考えるなら当事者が安堵できるように、こころの面もサポートする体制を作ることが責務です。


 中には「いのちの選別」を受けた80代後半の患者さんもいました。災害時の救急医療におけるトリアージと同じように、「助かる可能性がある60代までの現役世代を優先する」という選別が(なされた可能性が)あり、ボクが担当していた患者さんの中には、高齢であることを持って病院への入院を諦めなければならなかった人もいました。自宅や施設で訪問診療や訪問看護のみが頼りで、急に悪化し、ついに入院できずに人生を終えなければなりませんでした。

 先日のそのようにして亡くなった人のご家族があいさつに来てくれましたが、「歳をとっているのだからあきらめろ」と言わんばかりの社会の視線に家族は深く傷ついていました。こんな光景を全国に広げてはいけません。大阪の轍を踏んではいけないのです。


 ワクチン接種がすすめば重篤化する人が限られるから、かつての大阪のように医療がひっ迫することはないと言う人がいます。でも、いくら若い人は悪化しない、ワクチンを打てば悪化しないと言っても、ワクチン接種のスピードが鈍化して、若い人の接種が進まないところに感染力が強いデルタ株が広がれば、未接種の若い世代に感染爆発が起きるのは火を見るよりも明らかです。感染者の激増は明らかに入院患者さんを増やし、保健所の対応や医療機関の力がその圧倒的な「数」によってそがれてしまいます。


 「ワクチンを接種したからといって、全く感染しないのではない」という事実はインフルエンザでも同様にみんなわかっているはず。ワクチンを受けてもなお感染を防ぐためにマスク、手指の消毒、そして人と人が出会わないようにすること(飲食店と酒だけターゲットにして逃げてはいけません)、公衆衛生学的なルールを今一度みんなが自覚しなければなりません。ここが我慢のしどころです。

新型コロナウイルス感染症が人類にとって初感染であることを考えると、私たちは短期間のうちに「ワクチンを打てばコロナに勝てる!」と安心してマスクを外すのではなく、「次の世代」を守るため細心の注意を払って感染予防行動をすることが求められるのではないでしょうか。

 この苦しい経験を人類みんなが乗り越えてこそ、本当に私たちが一人ではなく、世界中の人々とともにこの世界を生きていることへの責任と連帯を感じることができるのだと痛感しています。







 

 



 
 
 

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