ボクのこだわり、ふたたび(10)寄りそう
- 松本一生
- 2019年9月23日
- 読了時間: 3分
先週の連休の後、今週も3連休がありましたが、世間が「休みモード」に入っている時こそ、認知症の人の危機がおとずれます。担当する先生が休日のために不在だからです。昨年は「秋のシルバーウィーク」として一気に長い休みがあったため、ゴールデンウィークやお盆の時と同じように、前もって対策ができたように思いますが、今回は2週にわたって週末・週明けが3連休で、しかも天候不良が重なりましたので、予想より大変な経過になった人も少なくありませんでした。
いつも往診している施設に入居している女性も体調が悪く、食事量が低下してきました。いつもなら連携医療を大切にしているボクとしては、内科・かかりつけ医の先生にお任せするのですが、今回は誰も医師がいない状況になりました。
点滴のことや薬のこと、急激に低下する血圧などのサインと、そこから考えられる体のメカニズムとの関係を介護職と連携しながら数日かけて何とか無事に切り抜けたかな~。
そんな時、いつも思うのですが、ボクはもう20年以上、認知症の精神科医療だけをしてきましたから、急性期の医療を担当する医師とは異なり、「こういう状態だから、こう判断して、このように対応すれば、病状はこのように改善するだろう」という医療からだいぶ遠いところでゆる~く日々の医療をおこなっています(誤解のないように書きますが、これはボクだけのことで、認知症の専門医をしている精神科の先生にはしっかりと身体面がわかっている先生もたくさんおられますので、間違わないでくださいね)。
専門医として自分の担当だけに徹し、それ以外は別の先生にお願いすることができる大阪市内の医療状況だからこそ、こういう体制を守り、専門以外のことには口を出さないようにしてやってきたのですが、言いかえればそのような体制でも地域を支えることができる都会の医療だからこそできる事であることを、今回は再認識しました。
調子を悪くした人は普段、診療をしている大阪市内の人ではなくて、この連休に市内に医師がいなくなるという地域だったのです。こうなるとボクの乏しい身体医療の知識には、ご家族の意見や、誰よりもその人の様子を細やかに見てくれている介護職から、しっかりと情報を得ることが大切です。遠距離でなかなかすぐにはいけない所でも、介護職から携帯電話で当事者の様子を訪問看護で得た数値に加えて、様子をビデオ撮影して送ってもらえたことで、脱水なのかそれとも点滴が多すぎるのかを見極めることができました。
自分は見守り、寄りそう医療者であると、いつも思っています。認知症はまだまだ難しい病気ですが、(たとえ完治できなくても)寄りそうことで、より認知症が悪くならず、天寿を全うするまでより良い状態を続けられるように協力するのが、ボクの役割だと改めて思いました。
本当ならこんなヤブではなくてもっと内科や身体面の医療もわかっていたらいいのにな~と思いましたが、これは医療機関のブログなので、ボクの心の叫びは聞かなかったことにしてくださいね。
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