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ものわすれブログ

ボクのこだわり、ふたたび(2)天候と症状


 今回の内容は本当に個人的な「思い入れ」から書いています。決して万民が認めた学説ではありませんので、あくまでも参考意見として読んでくださいね。

 臨床をはじめて10年ほど経過したころ、まだ地域包括ケアが今日のように叫ばれるようになる前には、認知症を診療する専門医が極端に少なく、診療所には広島や東京からわざわざ来てくれる患者さんが(ボクが良い医者であったわけではなく、どこへ行ってもうまくいかず困り果てた人が多かったのですが)来院してこられました。今では全国にものわすれ外来があり、地域には認知症サポート医がいて、しかもたくさんの認知症疾患医療センターが配備される時代になりましたので、再び現在では近隣の人が来院される時代になりました。地域包括ケアの概念で謳われているように、住み慣れたところで認知症の当事者や家族が安心して生活ができ、必要なら30分以内に連携した多くのサービスや近隣住民のサポートを受けられてこそ、地域住民としての安心が得られます。

 しかし以前はそうして遠方から来る患者さんが多く、ボクはあることに気づきました。広島や岡山からくる人の具合が悪くなった後、次は神戸、大阪や京都、そして愛知、静岡と、(あくまでも印象ですが)西から低気圧が近づいてくるにつれて、認知症の一部の当事者の体調や日内リズムが悪化し、こだわりが増え、被害感が出る場合や怒りっぽくなることがあったのです。

 もちろん、すべての人にそういった変化が出るわけではなく、10年通院している人で、全くそのような変化の影響を受けない人もいれば、診察室に入ってくるなり「今日はあかん~」と言いて来られる人とボクが同じような調子であることも珍しくなく、診療における一つの目安になっています。気象病と言われるように、自律神経や体のリズムが低気圧の襲来と共に悪化することや、前日との温度差が4~5度変わる日などは要注意として診療しています。

 とくにレビー小体型の人は自律神経の症状が出やすいため、天気が悪くなる前には起き上がれないとつらさを訴えてくる人が少なくありません。

 「うちの施設は全館エアコン完備で天候の変化を受けない」と言っていませんか。実はその建物の空調が完璧でも、(ボクの印象だけかもしれませんが)その地域が低気圧に覆われると影響が出ているようで、ボクの診療はかなりの割合で天候変化の話をしていることがあります。

 妻もパーキンソン症状が出ているため、天候の影響は便通とも関係するようです。大切な事はただ天気のことを気にするばかりではなく、そのような変化が体調に影響することもある、ということを知れば、「何もないのにどうしてこんな症状が出るのだろうか」と不安にとらわれて、より自律神経が混乱するよりも、その情報を知って、先が読めれば認知症の当事者や家族の安堵感につながり、病気が安定して悪化を緩やかにできます。ボクのこだわり(思い入れ)として、人はみな、自然の中に生きているのだと思います。梅雨の大雨が続きますが、一度、考えてみてくださいね。


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