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仲間として(7)働く介護者のなかまへ

  • 執筆者の写真: 松本一生
    松本一生
  • 2018年8月31日
  • 読了時間: 3分

 この9月には京都の自宅にいられなくなった妻を大阪の診療所上階に移して、ボクなりの介護を始めて5年目に入りました。

 これまで1991年に医者になり、1998年に専門書の分担執筆を依頼されてから20年間に論文、執筆(単著も分担執筆も)を合わせ71の論文を書きました(現在、日本精神神経学会の特集論文は査読中です)。講演会も1995年から数えると来年1月に大阪府のご依頼をいただいた研修会で2136回になります。

 たくさん仕事をしたと自慢したくて書いているのではありません。かつて書いたように、ボクの医者としての役割の中で日々の臨床と並んで大切にしてきたのが、大学院や大学で教鞭をとること、執筆を通して認知症を知ってもらうこと、そして地域理解のための講演、この3本柱がボクの大きな役割と思い続けてきたからです。

 しかし妻の介護によって、講演に行ける所には限界ができました。朝、大阪を出て講演し、夕食には大阪に戻る範囲しか講演には行けません。論文や本の執筆も年にいくつも書くことができなくなってしまいました(研究時間が減るだけでなく研究への前向きの気持ちも減りました)。

 実際、買い出しを考えれば午後の早い時点で診療を終えると往診も買い出しもスムーズに行きますが、その分、初診の患者さんに待っていただく日々が長くなり、医療法人の経営を担当する理事長とすれば収入も減りますから、仕事と介護のバランスをいつも取り続けることは、とてもエネルギーのいる仕事なのだと、改めて思います。

 先日も親の介護のために会社を辞めるといった若い介護者(息子さん)を何度も説得し、「仕事は軽減して続け、介護も人の力を借りながら続けることが肝心。仕事を辞めずに介護しましょう」と説得し続けていましたが、その息子さんが介護に燃え尽きてしまいました。

 頑張り屋だからこそ、力を抜いて、自分の人生70%、介護にかける力は30%と言ってきたのに、結局、彼は自分の力を出し尽くして、気がつけば母親の介護を放棄してしまいました。

 高齢者虐待防止法でいうネグレクトです。

 でも、ボクはこの息子さんが「善意の加害者」であることを知っています。やってはならないことをした彼もまた被害者ですから。

 仕事をする意欲もあるのに時間や距離の束縛があるような介護就労者。

 これも前に書きましたよね、子どもを持つおかあさんが、育児も仕事も両立させることが大変なのと同じように、われわれは「人生の時間」のなかでいつ、何を優先的にしなければならないかを決めます。子育てや介護など…、その個々人の決定を尊重するとともに、その決定をした人を「使えない奴だ」とは決して烙印を押さない社会を目指していきたいと思います。だって日本は「介護離職ゼロを目指す国」なのですから。

今回で80回、ブログを書きました。長いから短く…と思っていた今回も1201字になってしまいました。もっと短くクドくなくします~。


 
 
 

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