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ものわすれブログ

仲間として(4)女性が医学部落ちるなんて!


 ボクは歯科医師になるときにも、医師になるときにも、多くの人の「温情」を受けてきたと思います。歯科医師になるために大阪歯科大学に入れてもらった1975年、医師になり直すときに最後の最後に合格させてもらった1984年、いずれも両親が学費を出してくれただけではなく、無謀なボクを理解しようと努めてくれた「温情」でした。だからこそ、自分が受けた恩は医師となった今、できる限り患者さんとして来てくれる人々や、その人を介護する家族の人の事を考えた臨床にしたい、と思っています。

 うちは母の母が(臨時ではありましたが)教員を務め、母は自分の意志で医師になると決意し、女学校から一人で神戸生活を始めました。その後、入学したのが大阪高等女子医学専門学校、今の関西医科大学です。戦後は男女共学になりましたが、女子の医学教育を目指して作られた東京女子医大などとともに、「これからの時代、女性医師の必要性」を痛感したためにできた学校でした。ボクも医学部に入学するときには迷わず母の母校を選びました。そんな志がある学校で医学を学べるなんて、なんて幸せな事かとも思いました。

 大学生活でも、その後、研修医になっても常に女性医師が指導してくれ、医療の世界に女性がいることがあたりまえの生活を続けて、ボクの人生は社会に役立ちたいと願う女性によって支えられたと言っても過言ではありません。

 現在の最も親しいフィールドである介護の世界でも女性の活躍なくして介護保険の18年は成り立たなかったことは、誰の目にも明白です。

 最近の報道で「女性は医療の場にいなくなるから合格率を下げた」というある大学の事を知りました。昔から尊敬する大学でしたから、とてもショックです。一部の人の悲しい暴走でしょうね。学生や関係者のみなさんが気の毒です。

 そのニュースを聞いた時に感じたのは、これからの社会では結婚や出産をして一時的に職場を離れねばならなくなる女性に留まらず、男女を問わずどのような仕事に就いている人にも「その人の事情」を理解してもらわなければならない少子高齢化の中に、われわれはいるということです。

 ボクのように介護のために医師の仕事をある程度軽減させ、それでもその地域の一員として働きたい人、親や配偶者の介護のために早退、休暇をとる会社員こそ「あたりまえ」の存在になっています。今回のことは、そんなわれわれが「社会的価値が低い」と言われていることと変わりないじゃないですか。LGBTが生産性がないなどと言った人もいるようですが、人と人とのつながりは生産性ではなく、精神性でつながっていくものです。

 ボクが妻の食事にかかわって4年が過ぎました。うちの場合には娘や息子が買い出しを手伝ってくれます。娘は料理も作ってボクを支えようとしてくれます。診療所のスタッフもボクのために買い出しにさえ行ってくれます。

 でもね、そのような状況を得ることができない多くの働く人々のために、ボクはこれから「声を大にして」言いたいんです。たったひとりで結婚や子育て、介護や闘病のために、たとえ100%の力を仕事や生産性に出すことができなくても、歯を食いしばる人がいる。そのことで評価が下がるような国であり続けるなら、日本死ね!

 私たちはそれぞれの事情を抱えながら、それでも「何とか仕事もしたい。自分も評価してほしい」と願いながら人生を送ります。自分が思い描いていた経路とは異なる立場になっても、それでも苦難のなかに喜びが同居できる社会を目指して、これからも還暦過ぎたジジイは世界の片隅で、大声をあげて叫ぶぞ!!


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