仲間として(3)酷暑日とホロコースト記念碑
関西は連日のように36度、37度…、8月6日は73回目の広島の日でした。いつも式典に参加される人たちが脱水にならないか心配しながら記念式典をテレビで見ている立場ですが、今年は西日本の豪雨の後、急激に暑くなって患者さん、介護家族とともに大変な状況でした。患者さんも心配ですが介護をしている家族が体調を崩している夏だからです。ボクもこのところ体調はすぐれません。暑くて往診に行っても頭痛がしてきて「ね、熱中症…」の毎日です。
そんな暑さから逃れて妻の夕食の惣菜の買い出しを天満橋の京阪シティモールですませて、上階にある本屋さんに行きました。以前から読書はある程度するタイプなので、「久しぶりに詩の本を買おう」と思いました。これまでに何冊か買ったことがある長田弘さんの詩集、「奇跡」を買って帰りました。
読んでいるとベルリンの詩が書いてありましたが、読み進めるうちに「あ、ここ…」と思い当たる所が出てきました。
その場所を訪れたのは2006年、国際アルツハイマー病協会の国際会議がベルリンで開かれ、「認知症の人と家族の会」が日本アルツハイマー病協会として参加し、ボクは当時、国際交流委員として参加しました。
ホテルがブランデンブルグ門(東西冷戦をよく知っている人には忘れられない場所でですね)に近く、そこから歩いてすぐのところに、その「場所」はありました。
灰色の、長方形のコンクリートの立方体がいくつもいくつも続く、独特な雰囲気、畏怖を覚えるようなその光景を見たとたんに、これが持つ意味を感じ取りました。ドイツで起きた最悪の歴史、ユダヤ人の記念碑なのだろう、と。
でも、その時には誰にも聞かず、本から知識を得ることもありませんでした。ベルリン訪問は国際会議でやたら忙しく、自分のポスター発表もあって大忙し、その前年にやはり代表として訪問したイスタンブールと並んで、観光など全くできない訪問だったからです。
それから12年たって初めて長田弘さんの詩集に出会い、それをきっかけにパソコンで検索してみる(何とも旧世代の表現ですが)と、出てきました。ベルリンのホロコースト(大量虐殺)記念碑、です。
この文章を読んでいる若い人がいるなら、ぜひ、若い時に訪問してみてください。8月6日、広島を考えること、8月9日の長崎、私たちは多くの悲しみを知っています。そんな私たちがベルリンの記念碑を目にすると、改めて人生の意味を考えさせられます。
ボクはもう海外に行くことができません。妻の事がある限り日帰りですからね。12年の時を経て、あの碑がくすんで語りかけてくる「もの」に出会ってみたいな~。