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ものわすれブログ

ボクのこだわり(4)診察室の模様替え


 精神科医になって26年目の冬、診察室の模様替え(と、言っても大げさに壁紙をすべて張り替えるのではなく、診療室を移動しただけなのですが)をしました。診察を四半世紀やっていると、時には診療室の雰囲気を大幅に変えたい気持ちもありますが、変えなかったのには2つの訳があります。

 ひとつはお金がなかったこと。「嘘言え!」と思うかもしれませんが、20年前に世間に先駆けて老人デイサービスをはじめ、介護保険の枠にとらわれない取り組みとしてカフェのようなものをつづけて散財している間に、パートナーであった高齢の母が病気になり、闘病による減収が続き、母を見送ってからやっと安定した体制にできました。

 今一つはメンタル領域や認知症関係の患者さんの場合、ころころと変わるところで診察を受けるより、いつもそこに行けば同じ医者がいて、同じ雰囲気の中で「あ、前もここで診察受けたね」と思い出してくれることが本人の安定をもたらし、家族の安堵につながることを経験から知っているからです。

 半年ほど前でしょうか、診療所のガラスブロックの窓を境にした隣家の所有者が変わり、内装を全面的に変える工事が始まりました。

 いわゆるスケルトン状態から枠組みだけ残して新しくするためです。その騒音を避けるためにしばらく診療室を奥の部屋に移し替えました。するとどうでしょう。難なく部屋に入ってきて「先生、模様替えですか」と言いながら受診してくれる患者さんもいれば、配置が変わったことで認識ができず、帰る道の方向をこれまでとは逆にしてしまう人など、さまざまな反応が出ました。

 もちろん認知症を診てきた医者ですから、その辺の変化の影響が出やすい、場所的見当識の低下している人とそうではない人、同じ動きをすることで安定する人(たとえば前頭側頭型の人など)の受診には、できる限りスタッフが寄り添って入退室時の誘導を心掛けるようにしましたが、それでも何人かの人は空間構成の変化に適応しにくくなっていました。

 やはり「いつでも同じ安心を提供すること」がボクの役割だと思いました。これがこだわり、ですね。今朝、元の診療室に戻しました。

 もうひとつのこだわりは、このホームページの写真を見て感じられると思いますが、「色使い」です。スタッフとともにピンクのポロシャツを着て診察しているのは非常識かも。

 でも壁の色はクリームイエロー、ソファーはピンク、イスなどにして受診した人や家族のみなさんにホッとしてもらいたい気持ちからです。

 ただでさえ医者にかかるなんて嫌なこと。緊張する診察場面で、ほんの少しでも安堵感が出るように、明るく楽しい感じがする色合いにしています。

 ボクにはアクリル絵の具を使って絵を描くのが趣味で…、色にはこだわりがあります。もし、才能がもっとあれば画家として生きられたかも。配色に加えて室内にはヘタなボクの絵が何枚かかっていて、「仕事してるのか、遊んでいるのか」って?いえいえ、つまらない仕事場は嫌ですから、ね。


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