日々を生きる(9)若人の介護離職について
この夏、関西は自律神経が混乱しやすい2~3月が終わり、4月のお花見の時期、5月~8月になっても不安定な日々が続きました。九州の大雨は言うまでもなく、関東の皆さんは8月になって梅雨のように雨が続いて体調を崩した人が多かったでしょう。北海道でも7月ごろにこれまでなかったほどの猛暑があったかと思えば8月には涼しく、国中が不安定な天候に振り回されています。認知症の人も介護家族も支援職もみな等しく体調が悪い夏でしたね。
ボクは自律神経の影響が出やすく、季節の変わり目には体調に気を付けないと休診してしまいます(ひ弱ですみません)。とくに今年は日々の妻の夕食の買い出しも重なり、患者さんの受診も増え、自分の限界を超えてしまいました。朝7時から介護保険関係や診療情報提供書を書き、9時から午後4時前まで診察して(長年通院していた人が来院できなくなった場合などに限りますが)往診が加わります。毎日の診療時間で治まらないこともあれば週末にも。
「しなければならない仕事は増えるばかり、患者さんは断ることはできません。さて、どうしたものか」と悩み、妻の介護家族と医師との両立を考えることになりました。考えてみれば今、大阪に住んでいるのも、妻を京都の自宅に置いておくことができず、大阪で仕事をしながら体制を作ろうとして現在の形になったのですが、この先も体調と折り合いをつけていきたいですから、ね。
この気持ち、全国の介護者、介護家族の皆さん、ボクといっしょでしょうね。前回、これまでとは違う自分と生きてみることをテーマにしましたが、介護のためにボクなどとは比べ物にならないほど悩んでいる人が多いはずです。
ボクは開業医であり、患者さんへの迷惑(診療時間が短いことや救急対応ができないこと、初診の待ち時間が長いこと)など課題はありますが、自らの仕事を調整することができます。自分を壊さず、介護者としてもやっていけるように。
でも、介護事情で「やりがいもあり、周囲からも期待された仕事」を辞めざるを得ない「介護離職」の若い人々が増えています。介護だけではなく子育てや障がいのある家族と共にある人にも共通する課題なので新しい問題ではありませんが、介護をめぐって国中がこの課題に注目した今こそ、この問題を国中が考えるべき時でしょう。
これまで「子育てや介護を理由に短縮勤務は言えない」と思ってきた仲間のみなさん、認知症の家族のために、介護のために仕事を上手に調整して、限られた時間の中でも自分の社会や会社内での役割を果たすことができる社会ができてはじめて、一億総活躍時代です。 声をあげ仲間を増やし、個々人の就労の調整があたりまえの国をともに作りましょう。これは何もわれわれの介護だけではなく、次の世代の若者のことを考えるきっかけにもなります。少人数の若人が多くの高齢者を支えなければならず、若人が子どもにかけたい費用さえ、高齢者を支えるために使われるからこそ。
認知症や高齢者にしっかり取り組むことは、これからの世代を支えることに他なりません。みんなが考えるべき時は今、なのです。