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コロナ禍 先が見えないとき

  • 執筆者の写真: 松本一生
    松本一生
  • 2020年11月12日
  • 読了時間: 3分

更新日:2020年11月13日

 ここ数か月はある程度落ち着いていた感染状況が、11月になって寒くなったとたんに急増してきました。がっかりしている人も多いはず。ボクも頭の中では寒くなって空気が乾燥するとインフルエンザと同じように新型コロナもはやりだすだろうと思っていました。ですが、今年2月から始まったこのパンデミックに対しては、なんだか「がまん疲れ」が出ているようで、自分の考え方も甘かったと反省しています。これからがいよいよ正念場なのでしょうね。


 これまで精神科医をしてきて、メンタル領域の疾患は慢性の経過をたどることが多く、その病気との向き合いには「長い付き合い」の覚悟が必要であることを、日々の臨床で説いてきました。私生活でも妻の母親の27年にわたる介護生活の中で、何度もうつ状態を繰り返す義母だけでなく、支えているわれわれ家族が、繰り返す状態変化に疲れないように努力してきました。

 必ずしもそうなるとは限りませんが、妻の母の場合、気分の沈みが数か月続いて、その後には軽減し、また繰り返すという経過だったため、ものわすれが始まる前の20年は特に本人の気分の上下によって、周囲の家族が振り回された思い出があります。

 多くの慢性経過をたどるメンタル領域の疾患では、「治った!」と喜んでいても、その後に別の波が来て、喜びが続かないこともあります。だから患者さんと家族に対して、ボクは「過剰な期待をせず、かといって絶望せず、ゆっくりと対応していきましょう」と言い続けてきました。心のどこかでそういい続けることで、自分の家族に起きていることにも肯定的なイメージを持ちたいと思い続けてきたのでしょう。


 コロナ禍も同じような気がします。病気の種類は異なってメンタル領域と感染症では全く違うこともありますが、それでも新型コロナウイルスにはまだ、決定的な治療やワクチンによる防御ができません。それゆえ、感染者が少なく落ち着いているときには、我々のこころのどこかに「大丈夫、自分は関係ない」と思って、その事実をなかったかのように思いたい傾向が出るようです。しかし感染が拡大してくると、他人ごとではなくなる恐怖と不安が襲ってきます。


 「過剰なストレス」のコントロールという側面から考えても、メンタル領域の疾患で、治ったと思っても何度か繰り返すたびに、周囲の者が受けるストレスが大きくなっていくように、新型コロナも「収束した」と思いたい気持ちとは裏腹に、これまでで最大の感染がやってくると、私たちはストレスが同じ調子で襲ってくるよりも、大きな不安となって襲いかかってきます。


 やっと店を開けられると思った人々、やっと施設内クラスターを乗り越えたと思った人びと、やっと町にでかけられると喜んだ人々、みんなの期待が裏切られたかのような感染の再拡大に、こころが疲弊しているはずです。でも、今こそわれわれは「~にもかかわらず生き抜くために努力する」ことを求められます。さあ、もうひと踏ん張り。この10か月の経験から、この先は真っ暗ではないことが見えてきました。苦しいのはあなただけではありません。ともに「自分には何ができるか」、考えるときは、今です。



 
 
 

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