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ものわすれブログ

コロナ禍:専門職の新しい姿

 これまで20年の間、ボクは認知症ケアの世界で生きてきました。介護保険が始まると知り、ケアマネジャーの第1回試験を受ける準備をし、医者の世界だけではなくケアという新しい世界と連帯してこそ、これからの認知症を支えることができると確信したからです。

 その後、介護保険が始まり迷走の世界の中、診療所に「老人デイケア」を作り、試行錯誤を重ねてきました。医療とケアの連携は目前に迫ったかに見えました‥‥。


 そんな医介連携の世界がコロナ禍で変わりました。

 これまでの世界にはなかったパーソンセンタードケアに基づき、ケアを受ける当事者の気持ちにより沿ったケアや医療をおこなうことで、この20年のケアでは当事者目線の新しい世界が開けました。その世界が今、コロナウイルスのために「触れるな、近づくな」という感染防御を前面に押し出した概念に変わっています。介護・医療として感染防止が大切なのは今さら言うまでもありませんが‥‥。

 これまでのケアの「こころ」は通用しなくなったのでしょうか。そうではありません。


 ボクはこれまでの「当事者の立場に立つ視線を持つ」段階が第1段階、そしてコロナ禍で密な関係性が取れなくなったとしても、当事者の立場に立つことは「あたりまえ」のこととして、たとえ近づかなくても、その人や家族の気持ちに寄り添うのがあたりまえである世界が第2段階だと思うことにしました。たとえ物理的な距離を置くとしても、これまでの「ケアのこころ」がなくなりはしません。むしろ、これまでより思いは強くなったはずです。


 今晩、8月16日、京都五山の送り火の写真です。今年はコロナの影響で人が集まることを避けるために、送り火も制限することになりました。うちのマンションから手前に見えるのはリッツカールトンホテル・京都で、さらにその上には鴨川が見えます。その上のオレンジの光が五山の送り火、大文字です。今年はこれまでとは異なり、5つの端と「大」の字の中心部、計6か所だけが点火されました。例年のような松明の燃え盛る大文字ではありませんが、伝統ある宗教行事としてお盆の京都からご先祖をお送りする大切なこころの世界を表す点火です。

 ほら、写真でもオレンジの光が6つの点になってはっきりと見えますね。形は変わっても、その根底に流れる「人の気持ち」が変わらないことを、この送り火が教えてくれているような気がします。


 認知症ケアも一緒です。送り火がコロナの影響で点だけの点火になっても、送り火のこころが失われないように、われわれは認知症の当事者の目の高さになり、その人にふれることで共感を示してきたこれまでの在り方をスケールアップして、物理的に離れていたとしても、こころの面で、よりしっかりと触れ合っている関係を作ることができます。


 新しい時代の「あり方」について、新しい大文字の「あり方」を見ながら想いました。


 

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