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これからも(7)阪神淡路・震災25年

  • 執筆者の写真: 松本一生
    松本一生
  • 2020年1月16日
  • 読了時間: 3分

 京都に戻ってから大阪の診療所までの通勤が再開しました。いつも4時半に起きて5時半過ぎの京阪急行で診療所まで1時間、今日もまだ暗いうちから動きました。急行が発車してしばらく、午前5時46分を迎えました。今日で25年、こんなに暗かったんだなあ、とあの日を思い出しました。


 当時はもう少し遅く起きていたため震度5に襲われた京都の自宅で飛び起き、家族の安全を確認して診療所に向かうことにし、今と同じ京阪電車の神宮丸太町駅(当時は丸太町)で、来ない電車を2時間待った記憶があります。夜が明けるとその日は1日中、神戸、阪神間の町から煙が上がっていました。


 何をどうして良いのかわからず、それでも当時、大阪の診療所には神戸や阪神間から7人の患者さんが来院しておられましたので、真っ先に考えたのが「薬の確保」でした。でも、入ってくる情報ではかの地の医療機関がことごとく機能せず、なかには倒壊したところも。

 向精神薬を確保してリュックに背負い、動かなくなったJRの線路を歩いて大阪から神戸に行けたのが1月19日の昼でした。当時のボクは認知症だけでなく統合失調症の若い人も何人か担当していましたので、神戸、三宮の花時計のところで若い統合失調症の患者さんに薬を渡すことができた時の気持ちは忘れません。

 今ならそのような個人行動ではなく、統制の取れた支援をすべきなのですが、当時、そのようなシステムがなく、自分にできたのは彼らに薬を途切れず供給できたことだけでした。


 しかし震災後、神戸から大阪に転居(避難)してきた人を大阪市の関係者から依頼されて診はじめたとき、自分の力のなさと向き合うことになりました。当時は医者になって4年目、手探りで震災にあった認知症の当事者、その家族、そして震災により目の前で家族の最期を見なければならなかった人の急性ストレス障害による深い「うつ状態」は簡単に治せるものではありません。それから6~7年、何とかサポートを続けましたが、うつの改善がないまま数年後に通院が途絶えてしまった人も何人かおられ、その後悔がボクの診療の基本になっていると思います。


 災害が起きると疾患を持っている人、とくに認知症の人は「生きる条件」が厳しくなります。阪神淡路大震災のときの無念さを覆いかぶせるように、できる限り連携をしたいと願いましたが、その根底にはあの時「何もできなかった」という無念さがありました。時の経過とともに適切な避難所での支援ができつつありますが、それでもなお、認知症のために昼夜逆転することで、避難所でも問題視される当事者や介護家族の苦悩は尽きません。

 毎年のように大災害が起きるようになった2020年、阪神淡路からの教訓を刻んだボクらに求められるのは、「災害弱者」などと差別的に表現される人がいなくなるために、あの時の光景を若い人に伝え、信じられないようなことが目の前で起きたとしても乗り越えていく力を持ってもらうことなのだと思います。






 
 
 

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