• 松本一生

新しい試み(8)令和の主治医意見書


 西暦2000年(平成12年)の4月に始まった介護保険制度は、そろそろ20年を迎えようとしていますよね。かつてボクは大阪市の高齢者総合センターで認知症の相談担当医(開業医と並行して)をしていて、月に2回は午後から相談のために当時大阪の中心部にあったセンターに出かけていました。そこで認知症の悩みを持つ人や家族から相談を受けていたため、何となく「ケアマネジャーの資格をとっておいた方がいいんじゃない?」ってなことになって、第1期のケアマネジャーになりました。その時に思ったのが「この制度は本当に長く続けられるのだろうか」という気持ちでしたが、そのネガティブな予想を裏切って今日も介護保険は(少々大変になってきましたが)がんばってくれています。

 その時に最も大変だと思ったのが、介護保険のための主治医意見書でした。介護のために必要な医療面での情報を意見書に書き、それと認定調査の結果を合わせて認定が行われますので、責任は重大です。しかも「主治医」意見書なので、その人のことを良く知る主治の医師の意見書です。ボクのような専門医は患者さんの認知症の面は診ていますが、体の状態などは内科や外科の先生にお任せすることにしていますので、本当の意味の「主治医意見書」は書けません。

 ところが現時点で860人ほどの意見書がパソコンのデータに残っています。亡くなった人のデータも残っていますので、現在、本当に意見書を書いている人は500人ほどだと思います。今でも月に30件ほど、更新や新規で書き続けています。本当の主治医が書くべきと考えてきたのに、結果としてこんなに多くのデータが残るとは、どういうことなのでしょうか。

 その理由は「認知症」です。もうお判りでしょうね。体の面だけ見れば、とても調子がよく元気であるにもかかわらず、認知症のためにケアを受けなければならない人が思ったよりも急増して、いつものかかりつけ医の先生から「認知症のことで、この人の診察をお願い」、「ついでに

今回は介護度を上げたいから意見書も書いて」と言われることが増えて、結果的に多くの意見書を書くことになりました。できる限り1度書いて要介護の結果が出た後には、次の意見書を本来の主治医の先生に戻して、次からはその先生に書いていただくようにしていますが、そこで問題が出てきてしまうことがあります。認知症の当事者や家族が、最初、ボクに依頼してくれた先生のところに通院するのをやめてしまい、いくつもの医療機関を転々として本当の意味での主治医がいなくなってしまう場合です。

 そうなるとケアマネジャーも「次の意見書も書いてください。この1年間、この人をずっと診てきたのは先生しかいませんから」ってことになって、結局はボクのような医者が意見書を書くことになってしまいます。もちろん誤解がないように書きますが、専門医をしていても立派に意見書が書ける先生もたくさんおられます。しかしボクは‥‥ダメですわ。

 そこで令和の新しい試みとして、1回は認知症の面からボクが意見書を書いたとしても、その間もずっとその人を診続けてくれる内科や外科、整形外科など身体科目の先生を離さないように、ボクもしっかりと目を注ぐこと、です。本当の意味での診診連携をしていかないといけないな~と感じています。令和の主治医意見書は、これまでよりも「かかりつけ医」の先生との連携を大切にしたいと、改めて思いました。

また、長いって?はい、わかっていますが、今回は1442字になってしまいました。 


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