• 松本一生

院長ブログ(126回)コロナとケア: 正しい情報という光

 新型コロナウイルスによる世界の混乱は、国々の出入国制限や人畜共通感染も話題となり、われわれが向き合わなければならないのは「恐怖」への対応となりました。

 ボクは感染症の専門医ではありませんが、「情報を正しく持って、適切に対応することで当事者や家族・地域が安心できれば、病気と向きあうことができる」という心理教育プログラムを専門のひとつとして臨床を続けてきました。それは心理教育のメインストリームである統合失調症のみならず、うつ病、認知症や多くの病気に対して効果があるものです。しかし今回のように世界的な混乱が起きて、正しい情報がどこにあるのかわからない「未知」の感染症と出合うと、心理面で大混乱が起き、差別や偏見がはびこります。


 ケアの現場で多くを占める認知症の当事者、家族、そしてその人々を支える介護職もマスク不足、アルコールの品薄などから不安になっています。「熱がある場合には自宅から出るな」と言いながら、その人のケアは介護職が責任を持って行うように求められ、ただでさえ人手が少ない現場は大混乱です。国も自治体も経験したことがない事態に苦悩しています。


 そんな時だからこそ、認知症ケア専門士のみなさんは、自分の経験や知識を思い出してください。上級ケア専門士、専門士、准専門士は医療(総論)や福祉、介護、社会制度まで幅広い知識を獲得し、試験に合格した人です(たとえケア専門士になった後、単位が取れなくて更新することができず専門士の資格を失った人であっても、かつて専門士に合格したということは、認知症、感染や医療も学んだ人だということです)。このような事態でみなさんが受験に臨んで身に着けた医療やケアの正しい知識こそ「恐怖」の最中、大きな力になることに気づいてください。


 何もみんなに最前線に出ろと告げているものではありません。たとえばボランティアとして地域社会に協力した時に、「認知症ケアの資格を取ったことがある」人の正しい発言が地域のひとびとの安心になります。

 家庭や親族間でも情報がなく混乱が起きているときには、みなさんの知識こそ安心につながります。医者のように診断するのでも、その場を仕切るのでもありません「無知から起きる恐怖・パニック」の連鎖が起きているなら、みなさんの情報が地域崩壊を食い止めることができると言いたいのです。

 そのためには、現場にいる専門士が倒れると多くの当事者、家族が迷ってしまうことに気づいてください。無理せず体力を残して感染しても免疫が対抗できるように備えましょう。

 

 われわれ日本認知症ケア学会の会員と全国にいる認知症ケア専門士は、認知症というタフな疾患と向き合い、あきらめることなく伴走してきました。そのわれわれが持つ「粘り強さ」こそ、真っ暗な荒波を受けて大海を行く小舟に乗り合わせた私たちみんなにとって希望、光なのです。地域を支え混乱やデマから正しい方向に導く知識を持つこと、あなたにはそういう役割があるのです。






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