2017年4月から朝日新聞デジタル版・アピタルで

「認知症と生きるには」というコラムを執筆中です。

http://www.asahi.com/apital/column/ninchisyou/

​朝日新聞(デジタル版)お知らせ

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診療にて(8)今を生きる人と出会う

日々の診療の中でボクは常に「今を生きるひと」と出合います。認知症という病気が完治することがなく、しかも長年にわたってその病気と付き合いながら人生を送ることが大切であるからこそ、ボクの目の前に座る人々は、「今、ここ」での命の輝きを大切にして、明日に希望をつなぎたいと願っています。 自分の人生を振り返った時に、挫折の多い人生を支えてくれたのは、「今はつらくても希望を失わない」人々でした。自分にはたいした才もなく、それでも支援者になることで生きる価値があると思い続けてきたボクは、認知症と向き合う人と同時代を生きます。彼らは誰かに相談したくても相談する場さえないような状況にあっても、自分をあきらめることはありませんでした。ボクはそういう人々を「支援する」という形を取りながら、実は「それでもあきらめない人々」から力をもらい、支えてもらう毎日です。 かねてより精神医療の世界では「今、ここ(here and now)」を大切に考えます。完全に治癒できる精神疾患も昨今では増えましたが、かつて治療が困難で、しかも今のように著効する薬がなかったころには、「何とかその一日を生きることができた」といった日々の積み重ねが大切でし。今でも、もちろんその日その日を大切にしながら、少しでも悪くならないようにすることが、慢性の病気やメンタル領域には大切な考え方ですが、一昔前には「その日」を何とか過ごすのが精いっぱいの人がたくさんいました。ボクは精神科医その願いや努力を見てきました。 認知症の人が混乱なく安定した病気の経過になると、結果的には悪化が遅くなります。時代が変わり認知症への社会の理解は25年前にボクが精

診療にて(7)診療情報の提供

患者さんとボクとの関係は、当然ながら「人と人との関係」です。言い換えれば出会いと別れがあります。これはいかなる医療機関とも、そして社会生活をする人であればだれにでも当てはまることでしょう。でも、認知症の場合にはちょっと異なる点があるかもしれません。一般的なケガ、例えば骨折をした場合などは、医療機関と出合って受診し、そこで医師と出会い、診断を受けて治療方針が決まればケガが治る時期を待って別れ・・・・と、頻繁に出会いと別れをくり返す受診形態になります。 認知症は中核症状としての「ものわすれ」や判断力の低下などとともに行動・心理症状(BPSD)が出るため、当事者や家族、地域の人にもマイナスのイメージを伴うことがあります。しかもマンションなら「下の階に住むうちに風呂水を溢れさせないか」、「火を出さないか」など、「迷惑なことをしないか」という偏見の目で見られる人も多いのが現状です。本人の人権を守り、長い通院期間を通して、その人に「今、できること」を見出していけば、その人に対して周囲の者が過剰な偏見を持つことを防げるはずです。しかしその偏見をなくす発言をする人がいないとしたら、どうでしょう? ボクらはそのためにいると思っています。診療所の付近には一人暮らしで認知症を持っている人がたくさん住んでいます。前にも書いたようにボクの診療所は実家にありますので、その地で学び、育ったボクは友人の親御さんを診療していたり、親友の奥さんが認知症になっているだけでなく、かつては天ぷらそばを出前してくれた、あのおじちゃんが認知症になり、ひとり暮らしをしている姿を日々、目にします。 誰もその人のことを伝える人が

診療にて(6)カルテを書く

今でもボクのカルテは手書きです。これだけコンピュータが発達して、さすがに診療の保険請求まで手書きでしているわけではなりませんので、そちらは電子請求ですが、診察してカルテの記載は今でも手書きです。論文や原稿を書く機会も多く、すでにパソコンを使って文章を書き始めて20年たちましたので、カルテも…、と思うのですが、ボクはブラインドタッチができません。と、言うことはパソコンで字を書こうとすると画面を見続けなければならないのです。「もっと若い時にやっておけばよかった」と思いますが、時すでに遅し…。今からでも練習できるのでしょうが、それでもキーボードを押しながら面接する気になれなくて、あれこれと言い訳を言いながらこの先も手書きのカルテが続きそうです。 ここまで書けば何を言いたいか、りでしょう。診察の時に手書きのカルテなら相手の顔を見ながら診療すると(もっと積極的に言えばボクの目の前にすわった患者さんや家族の目を見つめれば、相手はオッサンに見つめられてキモいかもしれませんが)話をすることができます。 パソコンの画面を見ながらキーボードをたたき続ける診察はどうしても自分には合わない気がしているんです。 しかし時は地域包括ケアの時代です。患者さんや家族のプライバシーや守秘に注意しながらも、チーム医療、地域連携のことを考えれば、手書きではなく電子カルテの情報を提供できるようにするのが、これからの姿である、との思いもあります。う~ん、悩むところです。 もう一点、手書きで悩んでいるのが医療情報提供書です。これもボクは手書きです。読める字を手書きで書いて、相手の先生や介護職の皆さんにこちらの気持ちが伝わ